中華イヤホン市場を牽引するKZ(Knowledge Zenith)のベストセラー機「ZS10 Pro」の正統進化モデル、「KZ ZS10 Pro 2」。実売5,000円台という手頃な価格帯でありながら、片側4BA+1DD(計5ドライバー)という圧倒的な物量を投入し、さらに4チャンネルの電子チューニングスイッチとセミオープン構造を備えた話題のハイブリッドIEMです。
本記事では、実際に購入した実機写真とともに、基本スペックや注目の進化点、検証環境・試聴曲ごとの帯域別インプレッション、4段スイッチの最適設定、同価格帯ライバル(ZS10 Pro X、TRN ST7等)との徹底比較、そしてデメリットまで本音でレビューします。

KZ ZS10 Pro 2 のスペック・基本情報
前作(ZS10 Pro / Pro X)からドライバー構成とクロスオーバー設計が大幅に見直され、より解像感が高く歪みの少ない現代的なハイレゾ対応サウンドへと進化しています。
| 項目 | スペック・仕様詳細 |
|---|---|
| メーカー / ブランド | KZ (Knowledge Zenith) |
| モデル名 | ZS10 Pro 2 |
| ドライバー構成 | 片側4BA(31736デュアルBA×2) + 1DD(10mmスーパーリニア内部磁気DD) / 計5ドライバー |
| 周波数特性 | 20Hz – 40,000Hz |
| インピーダンス | 25Ω – 28Ω(スイッチ設定により変動) |
| 出力音圧レベル(感度) | 108dB/mW |
| コネクタ規格 | 0.75mm 2pin(qdc / カバー付き2pinタイプ) |
| 音響構造 | セミオープン(背面メッシュ開口設計) |
| スイッチ機能 | 4チャンネル・物理DIPチューニングスイッチ搭載 |
| 実売価格目安 | 約5,200円〜6,500円前後(セールや為替による) |
注目すべき3つの進化ポイント
① 片側5ドライバー(4BA+1DD)による圧倒的な解像感
高域〜超高域を担当する4基の高性能BAドライバー(31736×2)と、低域を受け持つ10mmスーパーリニアDDを搭載。クロスオーバー回路の電子分割により、1DDイヤホンでは物理的に鳴らしきれない微細な音粒や楽器のセパレーションを余すところなく描写します。
② 4段階の物理チューニングスイッチによる音質カスタマイズ
シェル側面に4つの独立したDIPスイッチを搭載。付属のピンを使って切り替えることで、低音のブーストや高域の伸びを物理回路レベルで調整でき、1本で多彩な「味変」を楽しむことが可能です。
③ セミオープン(背面メッシュ)構造による抜けの良い広大な音場
フェイスプレートに配されたスリットとメッシュによるセミオープン構造を採用。密閉型特有の耳にこもる圧迫感を低減し、音が左右へ自然に抜ける開放的なサウンドステージを実現しています。
音質レビュー:帯域別の変化と試聴インプレッション
実際に以下のオーディオ環境と楽曲を用いて、音質の詳細を検証しました。
【検証環境】
再生機材:FIIO KA13(USB DACアンプ / 3.5mm接続)、Shanling M1 Plus(DAP)
試聴音源:
・結束バンド『青春コンプレックス』(歪みギターの鋭いエッジ、ハイハットの連打)
・Ado『唱』(低音キックのアタック感と高速ボーカルのキレ)
・YOASOBI『アイドル』(音数の多いシンセとコーラスの分離感)
・Linked Horizon『紅蓮の弓矢』(大編成ブラスと合唱の定位表現)
高音域:4BAならではのソリッドなキレと伸び
高域は極めてシャープで明瞭です。結束バンドのハイハットの刻みやライドシンバルの金属音がくっきりと耳元で弾け、音の立ち上がり(アタック)の速さに圧倒されます。前作Pro Xと比べると粗削りなシャリつきが抑えられており、スイッチ設定でさらに刺さりをマイルドに補正できるため、多ドラ特有の爽快感を安心して堪能できます。
中音域・ボーカル:クリアで見通しの良い立ち位置
ボーカルは埋もれることなく、中央の少し近めの位置に定位します。4基のBAが中高域を繊細に補強しているため、Adoの激しい声色の切り替わりやハスキーな吐息まで克明に描き出します。音の分離が非常に良いため、激しいバンドサウンドの裏で鳴るアコースティックギターやキーボードのフレーズもしっかり聴き取れます。
低音域:10mmスーパーリニアDDによる引き締まったアタック
新開発のダイナミックドライバーにより、ボワつきを徹底排除したスピード感あふれるタイトな低音を鳴らします。重低音で全体を包み込むというよりは、ドラムのキックやベースのスラップの輪郭をタイトに切り出す鳴り方で、ロックやメタル、ダンスミュージックの疾走感を余すところなくブーストしてくれます。
音場・定位感:セミオープン構造の抜け感
ハウジング背面のセミオープンメッシュにより、音が頭内にとどまらず左右へスーッと自然に抜けていく感覚があります。多ドライバー機にありがちな「音が密集しすぎて疲れる」感覚がなく、ゲームの足音や左右の距離感も正確に把握できるため、FPS等のカジュアルゲーミング用イヤホンとしても極めて優秀です。
おすすめスイッチ設定ガイド
側面の4段DIPスイッチによる推奨設定パターンです(スイッチ上=ON / 1、スイッチ下=OFF / 0)。
- 全ON(1111 / UUUU):【最もおすすめ】
4BAの解像度と高域の伸びがフルに発揮され、低域もタイトに引き締まる「ZS10 Pro 2の真骨頂」を楽しめるハイファイ設定。 - SW1・SW2のみON(1100 / UUDD):
低域〜中低域をブーストし、EDMやヒップホップ、映画鑑賞で迫力とボーカルの厚みを両立したいときに最適。 - 全OFF(0000 / DDDD):
最もフラットで高域がマイルド。長時間の作業用BGMとして聴き疲れを極力抑えたい方向け。
本音レビュー:ここが惜しい・デメリット(向かない人)
5,000円台としては驚異的な完成度ですが、購入前に留意しておくべき短所も率直にレビューします。
ここがイマイチな点(具体的な短所)
- セミオープン構造によるわずかな音漏れ:背面にメッシュ開口部があるため、密閉型イヤホンと比べると高音域のシャカシャカ音がわずかに外へ漏れます。図書館や深夜の静まり返った部屋、満員電車での大音量再生には配慮が必要です。
- 付属ケーブルがチープで絡まりやすい:付属の透明ケーブルは細身で癖がつきやすく、せっかくの重厚な金属シェルの高級感を損ねがちです。タッチノイズを抑えて取り回しを良くするためにも、サードパーティ製ケーブルへのリケーブルを推奨します。
- 重厚な金属フェイスによる適度な重み:アルミ合金プレートを採用しているため、軽量樹脂イヤホン(FIIO JD10等)と比べると手持ち感・耳への装着時に適度なズッシリ感があります。
おすすめできない人・買わない方がいい人
- 遮音性100%の完全密閉型イヤホンを求めている人(図書館や極度の静寂環境メインの方)
- ウォームで丸っこいアナログライクな優しい音が好きな人(ZS10 Pro 2はソリッドで高解像度なハキハキ系サウンドです)
同価格帯ライバル機との詳細比較
| 比較項目 | KZ ZS10 Pro 2 | KZ ZS10 Pro X(前作) | TRN ST7 | 水月雨 (MOONDROP) CHU II |
|---|---|---|---|---|
| 実売価格目安 | 約5,500円 | 約4,800円 | 約4,500円 | 約3,500円 |
| ドライバー構成 | 4BA+1DD(5基) | 4BA+1DD(5基) | 5BA+2DD(7基) | 1DD(アルミニウム合金) |
| チューニングスイッチ | ○(4段DIP) | ×(なし) | ×(なし) | ×(なし) |
| 音響構造 | セミオープン | 密閉型 | 密閉型 | 密閉型 |
| 音の傾向 | 高解像度・爽快・抜け感◎ | 元気なドンシャリ・低音強 | 重厚多ドラ・立体的 | 繊細・ボーカル重視・美音 |
| 高域の刺さり抑制 | ★★★★☆(スイッチで調整可) | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
| 総合おすすめ度 | ★★★★★(多ドラの完成形) | ★★★☆☆(旧型) | ★★★★☆(コスパ高) | ★★★★☆(1DD名機) |
おすすめイヤーピース&リケーブル(激変カスタム)
KZ ZS10 Pro 2は、イヤーピースとケーブルの交換でさらに一皮剥けたサウンドへと進化します。
- AZLA SednaEarfit mithryl:サージカルステンレスコアが4基のBAの高域に極上の透明感を加え、セミオープン構造の音場を一段と立体的に引き立ててくれます。
- SpinFit NEO / CP100+:耳道への吸い付きを高め、低域の密閉感を向上。多ドラ特有の高域のシャープさをマイルドに整えたい方に最適です。
- Divinus Velvet:マイクロエンボス加工のサラサラな付け心地で耳への圧迫感を軽減。長時間リスニングが劇的に快適になります。
- Tripowin Zonie(16芯銀メッキ銅線・qdc/0.75mm):しなやかで癖がつかず、タッチノイズをゼロに。高域の透明感が一段上がり、取り回しと高級感が劇的に向上します。
総評・どんな人におすすめか
「KZ ZS10 Pro 2」は、5,000円台というエントリー価格で、本格的な多ドライバーの緻密な世界と物理スイッチの楽しさを味わい尽くせる傑作IEMです。
【こんな人には特におすすめ】
- 1DDのエントリー機から、音の分離感や解像度が別次元の多ドラ機にステップアップしたい方
- スイッチを操作して、楽曲ごとに低音ブーストやフラット音質を切り替えて遊びたい方
- 密閉型のこもる感覚が苦手で、抜けの良い開放的な音場が好きな方
- ロック、アニソン、ボカロなど、音数が多く疾走感のある楽曲をクッキリ聴きたい方
多ドラ中華イヤホンの進化を肌で実感できる一台として、初めてのステップアップに自信を持っておすすめします。
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