【レビュー】KZ ZST PRO X:10年の歩みが結実した超高コスパハイブリッドIEM

5.0
中華イヤホン

低価格中華ハイブリッドイヤホンの代名詞として10年近く君臨してきたKZの「ZST」シリーズ。初代ZST(2016年)、ZST X(2020年)を経て登場した最新モデル「KZ ZST PRO X」は、単なるマイナーチェンジではなく内部音響設計が刷新された現代基準の1DD+1BAハイブリッド機です。

本記事では、新開発「Zenithダイナミックドライバー」とカスタムBAの連携、旧機種ZSTxやEDC Proとの音質差、再生機器ごとのインプレッション、弱点を補うカスタマイズまで徹底検証しました。

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実機外観とスペック:進化を遂げたハイブリッド構造

KZ ZST PRO Xは、初代から受け継がれてきた軽量エルゴノミック樹脂シェルを踏襲しつつ、音響ノズルと内部音響チャンバーが現代的なアコースティック設計にブラッシュアップされています。

KZ ZST PRO X 実機写真
KZ ZST PRO X 実機写真:ユーザー撮影による実機外観。軽量エルゴノミックシェルとリケーブル換装時のセッティング
項目 スペック詳細
ドライバー構成 1DD(ZenithスーパーリニアDD)+ 1BA(30019系カスタムBA)
インピーダンス 22Ω
出力音圧レベル(感度) 112dB
再生周波数帯域 20Hz – 40,000Hz
コネクタ規格 0.75mm 2Pin(QDCタイプ・突起カバー付き)
プラグ仕様 3.5mmステレオミニ(L型金メッキプラグ)
実売価格帯 約2,500円〜3,500円前後

音質レビュー:帯域別の変化と試聴インプレッション

音質検証にあたっては、以下の再生環境にてハイレゾロスレス音源を用い、約20時間のエージング完了後に試聴を行いました。

  • 検証DAC / DAP:FIIO KA13(3.5mmアンバランス接続)、Shanling M1 Plus
  • 主な試聴楽曲:結束バンド『青春コンプレックス』、Linked Horizon『紅蓮の弓矢』、Ado『Tot Musica』、YOASOBI『夜に駆ける』

高音域:キレを残しつつサ行の刺さりを抑制

旧世代KZのハイブリッド機で最大の懸念だった「高域のシャリつきや金属的なピーク」が大幅に改善されています。カスタムBA(30019系)が鳴らすシンバルの打点は鮮烈でキレ味鋭いものの、耳障りな角が丸められており、結束バンド『青春コンプレックス』のハイハット連打でも耳が痛くなりません。煌びやかさと聴きやすさのバランスが取れています。

中音域・ボーカル:埋もれずくっきりと前に出る定位

伝統的なドンシャリからマイルドなU〜V字特性へ移行したことで、ボーカルの不自然な凹みが解消されています。YOASOBI『夜に駆ける』のikura氏の歌声は伴奏のベースやドラムに埋もれることなく、スッと中央に立ち上がります。ギターのディストーションやストリングスの質感も鮮明に描写されます。

低音域:Zenithドライバーによる深く歪みのないアタック

ドーム径を拡張した「ZenithスーパーリニアDD」の恩恵が如実に現れるのが低音域です。Ado『Tot Musica』の重厚なバスドラムやサブベースは地響きのように深く沈み込み、かつ余計な膨らみがなくタイトに収束します。ボワつきのないスピード感があるため、中高域のクリアさを損なうことがありません。

音場・定位感:樹脂シェルの利点を活かした自然な抜け

左右の音場はアンダー3,000円のイヤホンとしては十分に広く、密閉感特有の窮屈さを感じさせません。ロックバンドのドラムセットの左右配置や、ゲームプレイ時の左右の足音・爆発音の距離感も素直に判別できます。

歴代モデル(初代ZST・ZSTx)との違いと進化点

長年親しまれてきた過去機種と並べることで、ZST PRO Xが遂げた進化が明確になります。

比較項目 KZ ZST PRO X(最新作) KZ ZSTx(2020年旧作) 初代 KZ ZST(2016年)
搭載DD ZenithスーパーリニアDD 第2世代 XUN DD 初代グラフェンDD
高域の質感 キレがあり滑らか(刺さり激減) 鋭く明るいがサ行が刺さりやすい 金属的で粗さが目立つ
低域の解像度 深くタイト・スピード感あり 量感はあるがボワつきやすい 量感重視・やや輪郭が甘い
帯域の繋がり 自然なU〜V字で一体感が高い ドンシャリ・中域の凹みあり 分離が荒くDDとBAの乖離あり

本音レビュー:ここが惜しい・デメリット(向かない人)

ここがイマイチな点(短所・注意点)

  • ノズル径がやや太め(約5.5mm):耳腔が極端に細い方の場合、付属イヤーピースではステムの太さによる圧迫感を覚えることがあります。
  • 付属シリコンイヤーピースの傘が薄い:密閉度が十分に取れないと低域のパンチが抜けてしまうため、サードパーティ製イヤーピースへの交換がほぼ必須です。
  • キャリングケースや変換プラグは非同梱:パッケージは極めて簡素な紙箱のみで、持ち運び用ポーチなどは付属しません。

おすすめできない人・買わない方がいい人

  • 完全フラットなモニターライクサウンドを好む人:帯域の一体感は向上したものの、音のキャラクターはあくまでKZらしいノリの良いドンシャリ系です。原音忠実で乾いた音を求める方には向きません。
  • イヤーピースの交換や微調整を行わず箱出し完全な状態で使いたい人:純正イヤーピースのフィット感に左右されやすいため、手持ちのピースで合わせる前提の製品です。

競合・同価格帯ライバル機との詳細比較

実売2,000円〜4,000円前後の主要ライバル機と実機性能を比較しました。

項目 KZ ZST PRO X KZ EDC Pro 水月雨 CHU II KZ Castor(ハーマン版)
構成 1DD + 1BA(ハイブリッド) 10mm 1DD 10mm Al-Mg 1DD 2DD(デュアルDD)
シェル素材 軽量樹脂(カスタムIEM風) 樹脂+金属フェイス 亜鉛合金ダイキャスト 厚型樹脂+金属フェイス
音質傾向 エネルギッシュなU〜V字 脱ドンシャリ・滑らか美音 明瞭・爽快系ニュートラル 重厚ドンシャリ(スイッチ付)
低域の迫力 深いアタック・スピード感 適度・タイトで自然 やや軽快・タイト 圧倒的なサブベース量感
高域のキレ BAらしい鮮烈なキレ 刺激を抑えた滑らかさ 繊細で抜けが良い ソリッド・明快
向いている音楽 ロック、EDM、アニソン J-POP、バラード、ボーカル 女性ボーカル、アコースティック クラブ系、映画サントラ

おすすめのカスタマイズ(イヤーピース・リケーブル)

イヤーピースの選定

  • SpinFit CP100+ / NEO:独自の3Dクッション構造により、ステムが太めなZST PRO Xでも耳の奥まで吸い付くように密着。中高域の濁りを払拭し、低域の密閉感を完璧に確保します。
  • final TYPE E:低音の沈み込みとパンチをさらに太くし、BAドライバーの高域のピークを程よくマイルドに落ち着かせたい時にベストな選択です。
  • Divinus Velvet:マイクロエンボス表面により圧迫感を和らげ、長時間の試聴でも耳が痛くなりにくい快適な装着感を提供します。

リケーブルによる取り回し改善

付属ケーブルはやや細く絡まりやすいため、QDC端子(0.75mm 2Pin)対応の編み込み無酸素銅(OFC)または銀メッキケーブル(NICEHCK BlackCatやIcyMoonなど)に換装することで、タッチノイズが激減し、音の密度感とボーカルの明瞭度が一段と引き立ちます。

総評・どんな人におすすめか

KZ ZST PRO Xは、中華イヤホンの歴史を切り拓いた伝統の「1BA+1DD」構成を、現代のチューニング技術と最新ドライバーで磨き直した快作です。

「2,000円〜3,000円台で、退屈しない元気なロックサウンドを楽しみたい」「昔のKZのような鋭すぎる金属音は苦手だが、ハイブリッドらしいキレ味は欲しい」という方に、まさにうってつけの1本です。

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