低価格リケーブル界隈で一時期非常に話題になった“黒猫”こと、「NICEHCK BlackCat(4.4mmバランス)」。米国製オイル含浸亜鉛銅合金を採用し、中音域のボーカルに圧倒的な厚みをもたらす個性派ケーブルです。
本記事では、当ブログでもおなじみのハイテクマルチドライバー構成IEM、「Kiwi Ears Quintet」との組み合わせによる化学反応を軸に、その音質傾向や取り回し、おすすめの組み合わせまで詳しく掘り下げていきます。1DD+2BA+1Planar+1PZTという異次元のドライバー構成を持つQuintetに、オイルコーティング亜鉛銅合金という異色のケーブルを合わせることでどのような変化が生じるのか、徹底的に検証しました。
NICEHCK BlackCatは、米国製の特殊オイルコーティング亜鉛銅合金線を採用した4芯ケーブルです。実売2,000円〜3,000円台(セール時)という超低価格ラインながら、高級ケーブルの手法である「油浸(オイルコーティング)」を取り入れたことで、中華イヤホンマニアの間で大きな話題を呼んだ1本です。
1. デザインと取り回し:精悍なブラック、でも滑りは……?

見た目は名前の通り、プラグから被膜、分岐パーツに至るまで「完全なる漆黒」で統一されています。余計な装飾を削ぎ落とした無骨さが、逆にガジェット感をそそる渋い仕上がりになっています。
質感・取り回し: 4芯のわりにはやや太めで、表面はツルッとしたビニール皮膜です。しなやかさはそこそこありますが、衣類との摩擦で少しタッチノイズを拾いやすいのが玉にキズです。
スライダー: ここは正直、NICEHCKの低価格帯特有というか、滑りがあまり良くなく、位置調整にちょっとコツがいる不器用な一面があります。
2. 音質傾向:主旋律を引き出す「濃厚クッキリ」サウンド
BlackCatの最大の武器は、「中音域(特にボーカルや主旋律パート)をグッと前に引き出す説得力」です。 原音忠実なHi-Fi系とは一線を画す、少し味付け濃いめの脚色系ですが、これが驚くほど生々しくまとまります。
高音域: 純銅線のようなモタつきはなく、亜鉛ミックスの恩恵かカチッとソリッドで明瞭です。しかし、銀メッキ線のようにツンツンと刺さる感じではなく、中高域からスムーズに繋がって綺麗に抜けていきます。
中音域: ここが一番のハイライトです。ボーカルの輪郭がクッキリとして、目の前で歌ってくれているような濃厚な距離感になります。
低音域: 地鳴りのような深い沈み込み(サブベース)は少し控えめです。その代わり、アタック感のあるベースラインやキックの帯域を上手くプッシュしてくれるため、音楽全体の骨格がボワつかずにハキハキと鳴ってくれます。
3. 💎 Kiwi Ears Quintet × BlackCat(4.4mm)のマッチング
さて、ここからが本題です。「Kiwi Ears Quintet」にこの黒猫を4.4mmバランス接続で組み合わせると、お互いの弱点を補い合う「完璧な凸凹コンビ」が完成します。
① 超高解像度なQuintetに「温度感」と「まとまり」が宿る
Quintetは、平面駆動(Planar)やピエゾ(PZT)を搭載しているおかげで、1音1音の描写力が非常に高い「緻密な分析派」イヤホンです。ただ、個性が強いマルチドライバーゆえに、楽曲によっては「音がカチッとしすぎて冷たく聴こえる」「ボーカルが楽器の解像度に埋もれて一歩引いて聴こえる」という贅沢な悩みがありました。
ここにBlackCatを噛ませると、黒猫特有の「中域を前に出す力」が作用し、一歩引いていたボーカルがステージのセンターにバシッと定位します。冷徹だったQuintetのサウンドに、じんわりとした温度感と生々しい肉声感が宿る感覚を味わえます。
② 4.4mmバランス化による「空間の立体感」と駆動の余裕
4.4mmバランス接続にすることで、元々Quintetが持っていた広い音場がさらに左右に大きく広がります。 BlackCat単体だと「音が近づく分、少し音場が狭くなる」という傾向がありますが、Quintetの持つ圧倒的な分離能力と合わさることで、「ボーカルは脳内に近く、バックの楽器は左右の遠くから立体的に定位する」という、極上の3Dサウンドに化けます。ピエゾが鳴らす高域の繊細さも綺麗に残したまま、4.4mmのパワーで低域のキックにドッシリとした芯が通るため、ロックやポップスを聴いた時のノリの良さが跳ね上がります。
🟢 良い点(メリット)
ボーカルの化けっぷり: Quintetのドライな中域に艶と近さが加わり、女性・男性問わずボーカル曲が非常に楽しくなります。
高域のトゲが丸くなる: ハイテクドライバー特有の硬めの輪郭が、オイルコーティングの絶妙なマイルドさでほぐれ、聴き疲れしにくくなります。
圧倒的なコストパフォーマンス: このクラスの音質変化と4.4mmバランス化が、アンダー3,000円台で手に入るのは驚異的です。
🔴 気になる点(デメリット)
超ハイスピードな曲は少し苦手: オイルコーティング線の特性上、低域がややウォームで丸みを持つため、超高速な打ち込みやメタルなどの楽曲だと、Quintet本来のキレ味がほんの少しマイルドに中和されてしまうことがあります。
取り回しとスライダー: ケーブルがやや太くタッチノイズがあり、スライダーも硬めなので、外へ持ち出してガシガシ使うには少し不器用な印象です。
4. NICEHCK BlackCat vs BlackCat Ultra 徹底比較
| 比較項目 | BlackCat(無印) | BlackCat Ultra |
|---|---|---|
| 構成 | 4芯 亜鉛銅合金 | 8芯 亜鉛銅合金 |
| 音の変化 | 中域の押し出し↑ ボーカル前面 | 情報量↑ より詳細で鮮やか |
| 取り回し | やや硬め・太め | 意外にしなやか |
| タッチノイズ | やや多い | 改善されている |
| おすすめ層 | コスパ重視でボーカル強化したい方 | 全体的な音質底上げを求める方 |
5. おすすめの組み合わせイヤホン&イヤーピース
相性抜群のおすすめイヤホン
BlackCatは中域の押し出しが強いため、V字型バランスのイヤホンと相性抜群です。
- KZ ZSTx / ZST PRO X: V字型のドンシャリサウンドに中域の厚みが加わり、ボーカル曲が劇的に聴きやすくなります。
- KZ Castor Bass: 重低音特化の音にボーカルの芯が通り、バランスが改善されます。
- KZ EDX Lite: 高音の刺さりが緩和されつつ、中域の密度が向上します。
音質を最大化する2026年最新おすすめイヤーピース
BlackCatリケーブルの効果を最大化するおすすめイヤーピースです。
- SpinFit W1 / NEO: 3Dクッション構造で耳道に密着。BlackCatで押し出された濃厚な中域ボーカルの解像度をさらにクリアに引き締めます。
- Divinus Velvet: サラリとした付け心地で圧迫感を解放。ボーカルの近さを維持しながら音場を左右に広げ、聴き疲れのない上質な音に昇華させます。
- Final TYPE E: 低域の量感をよりソリッドに補強したい場合や、高域のシャープさをマイルドに落ち着かせたい時に最適です。
6. よくある悩みとトラブルシューティング
Q. ケーブルが硬くて取り回しにくい
A. BlackCatは4芯構造のためやや硬めです。使い始めは巻きグセが残りますが、1〜2週間使い続けると馴染んで柔軟性が出てきます。どうしても最初からしなやかな取り回しを求める場合はBlackCat Ultraの方がおすすめです。
Q. タッチノイズが気になる
A. ケーブルクリップで衣服に固定するか、耳掛け部分のカーブをドライヤー等の温風で自分の耳の形に合わせて軽く成形し直すことで、タッチノイズを大幅に軽減できます。
7. 総合評価:★★★★★(Quintetや中域重視派なら「買い」の1本)
原音をそのまま1ミリも歪めずに聴きたいという「超ガチ勢の分析派」には、BlackCatの脚色感は好みが分かれるかもしれません。
しかし、「手持ちのイヤホンの音は好きだけど、もう少しボーカルを熱く聴きたい」「4.4mmバランス化に挑戦したいけれど、数万円のケーブルには手が出ない」という方には、間違いなくこれ以上の選択肢はないと言い切れます。
ハイテクなQuintetと、アナログな黒猫。この異色すぎる組み合わせによる変化は本当に面白いので、ぜひ試してみてください!



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